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掲載日:24.04.03
国土交通省/「自動物流道路」の検討に着手~今夏頃にコンセプトを示す予定
国土交通省は、「自動物流道路に関する検討会」を設置し、2月21日に初会合を開催しました。同検討会は、昨年10月、社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会が示した「高規格道路ネットワークのあり方中間とりまとめ」において、自動物流道路(オートフロー・ロード、Autoflow Road)の構築に向けた検討が必要であると打ち出されたことを受けて設置されました。自動物流道路は、構造的な物流危機への対応や温室効果ガス排出削減における切り札とされています。検討会では、自動物流道路の実現に向けて、自動物流道路の目指すべき方向性、必要な機能や技術、課題等を検討します。
自動物流道路については、昨年6月に政府が策定した「物流革新に向けた政策パッケージ」(2023年6月)の中で「高速道路上の車道以外の用地や地下を利用した物流専用の自動輸送についても、調査を行う」と示されました。本年2月に策定された「2030年度に向けた政府の中長期計画」の中でも、自動物流道路の構築について「10年での実現を目指し、具体化に向けて検討する」と示されたところです。
検討会において、ドライバー不足や高齢化、深夜労働などのドライバー負荷、小口・多頻度化、交通負荷(渋滞・事故)、環境負荷などの様々な物流課題を解決するため、思い切ったパラダイム転換によりロジスティクス改革に貢献する観点から、道路空間(インフラ)を活用した人手に頼らない新たな物流システムとして、自動物流道路の構築について今後10年での実現を目指すとしました。
諸外国の例も参考に、新たな技術によるクリーンな物流システムの実現に向けた検討を行うとして、海外での検討事例が紹介されました。
一つはスイスの地下物流システムです。主要都市間を結ぶ物流専用の地下トンネルを建設し、自動輸送カートを走行させる物流システム構築の計画が示されました。スイスのCST(Cargo SousTerrain)が進めるもので、地下20m~100mに直径6mの貨物専用トンネルを約500km構築し、自動輸送カートによりトンネル内の3線のレーンを時速30kmで24時間体制で走行するものです。また、イギリスのMagwayシステムも紹介されました。西ロンドン地区において既存の鉄道敷地内(線路の路肩)に全長16kmの専用線を敷設し、リニアモーターを使用した完全自動運転による物流システムです。
検討会は、今後、関係者へのヒアリングや論点についての議論を重ねて、本年夏ごろに中間とりまとめを行う予定です。
自動物流道路として活用する道路空間(インフラ)は、高速道路の中央分離帯や路肩、高速道路の地下空間などが想定されるほか、それ以外も含めて柔軟に検討していく考えです。ルート設定については需要の多い幹線が考えられますが、同省では大都市と中間都市を結ぶルート、あるいは都市内など、ほかのモードが苦手としているところもあり得るとしています。
関係者へのヒアリングについては、技術開発、法制度整備、鉄道など他モードとの協調領域、インフラ整備、商習慣、そして費用面といった克服すべき課題も多いことから、多様な意見を聞いて分析していくとしています。
今回の初会合では、委員から「ロジスティクス改革をインフラ側から進めることができ、物流のあり方を大きく変えるきっかけになる。自動物流道路は新しいモーダルシフトの転換先のモードの1つになり得る」「EC需要が増えている中で、自動物流道路は必須の基本になる。長期的な視点でみれば自動物流道路は財政的にも経済的にも押し上げる有効なツールとなる」など肯定的な意見が多かった一方、「世の中に認識してもらうことが大事」「整備しても使うユーザーがいなければ意味がないので、どこでどのような荷物を運ぶのか検討すべき」との意見もあったといいます。
ヒアリングと並行して論点の議論を行い、夏頃に中間とりまとめを行った後、概略設計、技術開発・実証、需要分析、制度整備や体制・事業スキームなどを検討し、最終とりまとめを行うとしています。
スイス地下物流のイメージ
道路空間の利活用イメージ