物流現場訪問:
掲載日:25.12.03
三菱ふそう/水素駆動の次世代トラックを開発
~航続距離、充填時間が向上
三菱ふそうトラック・バスは、10月22日、栃木県さくら市にある同社の喜連川研究所で「水素駆動の次世代大型トラック勉強会」を開催しました。11月9日まで開催された「Japan Mobility Show2025」で世界初公開されたコンセプトモデル2台を先駆けて紹介し、同乗試乗体験も行われ、水素トラックの先進技術を学ぶ機会が提供されました。
〇水素エンジン搭載大型トラックと、液体水素を搭載した燃料電池大型トラックを紹介
三菱ふそうは、水素を燃焼させるエンジン(内燃機関)で駆動する水素エンジン搭載大型トラック「H2IC」、燃料電池システムで駆動する燃料電池大型トラック「H2FC」の2種類のコンセプトモデルを紹介しました。水素が持つ高いエネルギー量という特性により、長い航続距離や短い充填時間が可能になるため、重量物運搬や長距離輸送を伴う商用車のカーボンニュートラル化を実現する上で、水素は有効な手段であると同社は考えています。
水素エンジン搭載大型トラック「H2IC」は、ディーゼルトラックと共通のコンポーネントや技術を流用することで、より早くスムーズな水素車両への移行を可能にする車両です。水素エンジン技術は、特に高い出力が必要となる建設用車両などの用途に適しています。圧縮水素ガスを燃料として使用しています。
液体水素搭載燃料電池大型トラック「H2FC」は、燃料電池システムが水素を電力に変換し、電気モーターを駆動させて走行します。水素を液体状態で搭載します。圧縮水素ガスと比べてより密度が高い液体水素を使用することで、最大1200kmの航続距離を実現し、15分以内での充填が可能です。ディーゼル車と同等サイズのリヤボディを確保しており、積載スペースへの制限もありません。
「H2FC」は、国内初のサブクール液体水素(sLH2)充填用の液体水素タンクを搭載しています。sLH2充填技術は、液体水素を扱う上で課題であったボイルオフガス(蒸発した水素ガス)を再液化することで、ボイルオフガスを排出する必要がなく、急速に液体水素を充填できる新しい充填技術です。sLH2は車両走行時もボイルオフガスの排出を削減します。さらに、sLH2は圧縮水素ガスを使用する際に水素ステーションに必要な設備を大幅に簡素化できることから、インフラコストの削減にも貢献し、水素社会の実現にも貢献します。
「sLH2はカーボンニュートラル実現のために必要な共通テクノロジー。全てのステークホルダーを巻き込んで実現していきたい」(安藤寛信副社長・開発本部長)と話します。
三菱ふそうは、液体水素を国内で唯一供給する岩谷産業とsLH2充填技術の国内での確立を目指して、共同で研究を進めています。国内水素ステーションも拡大しており、現在約150カ所(中京圏49カ所、首都圏46カ所、近畿圏20カ所、九州圏12カ所、その他エリア25カ所)で稼働中です。
「sLH2でカーボンニュートラル実現へ」と話す安藤副社長
世界初公開した水素大型トラック「H2IC」(左)と「H2FC」
特長あるフロント
運転席からは死角なく周囲を立体的確認できる
国内初のサブクール液体水素(sLH2)
充填用の液体水素タンクを搭載