物流情報ポータルサイト

25.09.03 自動物流道路/
社会実装に向け、つくば市の試験走路で実証実験~11月から実施予定
25.09.03 ヒューリックとJAL/
成田市下福田地区で国際物流拠点「WING NRT」を29年開業へ
25.09.03 植物油業界/物流持続性の向上を目的に協議体「油脂物流未来推進会議」を発足

物流現場訪問:
掲載日:25.09.03

日本通運/村田製作所、ローム両社と連携し、電子部品業界初のEVトラックによる共同輸送を開始

 日本通運は、環境負荷低減への取り組みを進める村田製作所、ロームと連携し、日本通運が所有するEVトラックを活用して、電子部品業界で初めてとなる共同輸送スキームを構築しました。7月17日から共同輸送を開始しています。1日当たりの走行距離は約210kmと、国内におけるEVトラックの輸送としては最長クラスの運行距離です。今後、さらに運行距離の長いEVトラック輸送を拡大させるには、国が主導してトラック用の急速充電インフラ整備を進めることが求められるほか、物流事業者には荷主からの相談を的確に具現化できる人材育成が求められます。

〇急速充電ステーションの整備が課題
 今回始まったEVトラックを使った電子部品の共同輸送は、往路は、ロームの京都物流拠点で輸出品を積み込んで出発し、村田製作所(以下、ムラタ)の京都物流拠点と大阪ロジスティクスセンターに立ち寄って資材品や輸出品を積み合わせ、関西国際空港まで輸送するものです。復路は、関西国際空港にて両社の輸入品を積み込み、ムラタ、ローム両社の物流拠点に届ける約210kmを運行するものです。(図)
 気候変動の深刻化に伴い、環境負荷を軽減する取り組みの重要性が増していることから、ムラタは、製品の輸送ルートが近いロームにEVトラックを活用した共同輸送を提案しました。ロームは、サプライチェーンマネジメント方針においてグリーン物流の推進を掲げ、かねて物流に関わる環境負荷軽減施策の検討を進めていたことから、提案を応諾しました。両社は、共同輸送スキームについて日本通運に相談し、3社による共同輸送プロジェクトを立ち上げ、3社で協議を進めた結果、共同輸送が実現しました。
 使用するEVトラック(最大積載量2トン、ウイング車)の航続可能距離は、カタログ値では120kmとなっていますが、「冬期の航続可能距離減少、交通渋滞を考慮すると、現状では85km前後で充電が必要」(日本通運 岡本俊一執行役員関西アカウントセールス部担当)と、バッテリー切れを起こさない走行距離をはじき出しました。共同輸送ルートが約210kmであることから、運行途中で2回の充電が必要です。ルート上で2トントラックの急速充電が可能なステーションをリストアップすると、「普通充電の設備は普及しているものの、急速充電の設備は不足しており、トラックが充電できる場所となると、さらに限定的だった」(同)と、急速充電設備のインフラが十分に整備されていないことが分かりました。
 ドライバーの連続運転時間4時間以内、1日の拘束時間最大15時間以内という法令を遵守して運行するとなると、ルート上から大きく外れる充電ステーションは除外して考えなければなりません。「ルート上のトラックの急速充電が可能なステーションを1件1件訪問して協力を求め、2カ所の充電ステーションから了承を得た」(同)ことで実現しました。
 2トンEVトラックは平日週5便運行します。T11型パレット4枚を積載し、ムラタとロームが2枚ずつ使用します。ムラタは、今回の共同輸送によって「年間240便の運行を削減し、CO2排出量は年間28.4トン削減できる」(寺村晃一執行役員モノづくり統括部統括部長)との見通しを示します。ロームは、「当社はCO2排出量実質ゼロを目指す『環境ビジョン2050』を進めており、さらに共同輸送による積載効率を向上させ、省エネルギー化への貢献を促進していく」(堀江佳孝SCM本部本部長)と表明しました。
 モノづくり企業では「脱炭素社会の実現」「持続可能性の実現」などを進めており、今後も新たな業種にも共同輸送が広がると予想されます。ムラタ、ロームともに京都の企業ということもありますが、「環境貢献への取り組み意識、安全・品質意識における価値観、共同輸送する上での両社の条件という3つが共通していた」(ムラタ 寺村氏)ことがパートナー選定のポイントになったといいます。
 今回の共同輸送は、1台のEVトラックをムラタ、ローム両社が“割り勘”の形で運行しますが、将来的には“相乗り”を求める企業も出てくるかもしれません。日本通運が取り組んだようにルート上での急速充電ステーションの選定・交渉の対応が求められます。場合によっては、自社の物流センターまで横持ちしたうえで混載輸送を行う提案が必要になるかもしれません。
 国や自治体には、環境改善に向けてEVトラックの急速充電ステーションの整備が求められます。物流企業においては、環境改善に向けた輸送プランを荷主に提案できる人材育成を進めることが求められます。


実証実験で良好な結果が出ていることを語る岡本氏

出発式での日本通運の岡本氏、ロームの堀江氏、村田製作所の寺村氏(左から)


共同輸送の概要