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掲載日:25.07.02
経済産業省/2040年の産業構造を提示~物流は垂直統合・水平連携活発に
経済産業省は、30年続いたコストカット型の縮み思考から、成長思考に転換するため、2年プロジェクトとして「人口減少下でも一人一人が豊かになれる日本の将来見通し」作りに着手してきました。産業構造審議会経済産業政策新機軸部会が検討を重ねて、6月に「第4次中間整理」として公表しました。人口減少下でも「賃上げと投資が牽引する成長型経済」に転換できれば、日本経済は成長が可能であると示しました。
さらに、30以上の産業について2040年の産業構造のイメージを提示しました。この中で、物流・流通は、垂直統合や水平連携により生産性を高め、その上で賃金水準を底上げすることで良質な雇用の場となるとシナリオを描きました。
〇物流の装置産業化が進む
人口減少下でも一人一人が豊かになれる日本を目指して、(1)2040年のマクロ経済(GDP、国内投資、賃金等)、産業構造の転換(製造業X(エックス)、情報通信・専門サービス業、アドバンスト・エッセンシャルサービス業)を定量的に示すとともに、(2)この実現に向けて、足下で今後検討が必要となる施策を取りまとめました。
マクロ経済について、官民目標の国内投資(40年度200兆円)を継続・拡大(新機軸ベース)すれば、賃上げがここ数年の労使交渉ベースの約5%と同水準で継続し、名目GDPは約1000兆円を達成するとしています。
マクロ経済の成長は「産業構造の転換」なくして実現できないとして、マクロ経済の成長に必要な産業構造転換を大きく3つに分けて、定量的に示しました。
1つ目は製造業です。GX・フロンティア技術による差別化や、デジタルを活用したサービス化等による高付加価値化をしていくことで、雇用を拡大し、賃上げも実現できる産業になるとしました。社会を変革するトリガーとなる製造業を「製造業X(エックス)」と名付けています。
2つ目は、情報通信業・専門サービス業です。フロンティア技術等により製造業の高付加価値化やサービス業の省力化等が進む際に生まれる新需要を開拓して、新たな付加価値を創出するとしました。他産業を上回る賃上げを実現する成長産業となるとしています。
3つ目は、エッセンシャルサービス業です。省力化投資を使いこなし、賃上げを実現できる産業である「アドバンスト・エッセンシャルサービス業」に変化するとしました。
この実現に向けて今後検討が必要となる施策を、併せて整理しました。今後の政策の方向性として、「新たな付加価値を生む成長投資促進のための構造改革」、「物価高・人手不足下でも持続的に成長できる地方経済・産業」、「成長投資を実現する経済基盤(エネルギー、通商等)の強化」という3つの柱で整理しました。
〇産業ごとの2040年の産業構造のイメージを提示
さらに、30以上の産業について2040年の産業構造のイメージを提示しました。
このうち、「物流・流通」は、極端な供給制約に直面する中で機能を維持していくため、流通から製造・物流領域まで含めた垂直統合や、協調領域における企業・業種の壁を超えた水平連携の動きが活発になるとしており、多くの企業ごとの個別最適は駆逐され、ハード・ソフト両面での標準化が進むと予測しています。
特に、物流は、フィジカルインターネット実装に向けて、求貨求車マッチングや倉庫管理などの物流プラットフォームを通じた効率化、庫内作業の自動化・機械化による物流の装置産業化が進み、荷主企業はこうした技術の活用や企業内外との連携を強化し、物流を含むサプライチェーンマネジメントを軸に据えた経営を進めると描きました。