物流現場訪問:
掲載日:25.05.07
岩谷産業とコスモ/都バス有明営業所内に「水素ステーション」を開所。燃料電池バスの供給拠点としての役割に期待
コスモエネルギー傘下のコスモ石油マーケティングと岩谷産業は、3月27日、東京・江東区の東京都交通局有明自動車営業所内において、水素ステーション「岩谷コスモ水素ステーション 有明自動車営業所」の開所式を開催しました。4月1日から営業を開始し、都内における燃料電池バスの水素供給拠点としての役割を果たしていきます。
〇水素モビリティの普及に貢献
バスの営業所内で運営する「水素ステーション」は、国内初となります。これまで同営業所内の水素バスは、外部の水素ステーションで充填してきました。新ステーションでは、岩谷産業のプラントから輸送された液化水素を敷地内の液体水素タンクに貯蔵します。マイナス253℃の状態で、バス200台分に相当する約3000kgの液体水素を貯蔵することができます。液体水素タンクの隣には水素ガスホルダーを設置しており、液体水素の一部が気化した水素ガスを貯蔵して再利用し、ロスを防止する仕組みです。
本ステーションで使用される液体水素ポンプには、初の国産となる三菱重工業製ポンプを導入しました。供給能力は1時間あたり120kg以上、充填圧力は82メガパスカル、1時間に8台の燃料バスに充填可能で、同時にバス2台への充填が可能です。今後は、都営バスに加え、民間のバス会社への利用拡大も予定しています。
コスモ石油マーケティングと岩谷産業は、東京・大田区の京浜トラックターミナル内に「岩谷コスモ水素ステーション平和島」を2024年に開所しており、今回が2カ所目の水素ステーションとなります。
開所式では、岩谷産業の牧野明次会長が、「水素の安定的供給に加え、技術面でも水素モビリティの普及への貢献と、水素エネルギー社会の早期実現に向け積極的に取り組んでいきたい」と挨拶しました。
テープカットに続いて東京都の松本明子副知事が登壇しました。小池百合子都知事の代理として、「水素社会推進法が成立し、サプライチェーンの構築、燃料電池バスも含めた商用車の普及拡大に向けた動きが本格化している。この時期に私たちが行動を起こせば、未来を変える大きな力になる。需給両面からの戦略的な取り組みが欠かせない。水素ステーションのインフラ整備で相乗効果を発揮、持続可能な未来への歩みを加速していきたい」と挨拶文を朗読しました。
経済産業省資源エネルギー庁の伊藤禎則部長は、「エネルギー基本計画のGXのシンボルとなるのが水素だ。社会推進法プロジェクトが動き出せば、2025年が日本にとって水素元年になるだろう」と展望します。
岩谷産業は今後、民間バス会社へのインフラ整備として水素ステーション建設を積極化させていく考えです。
コスモエネルギーの山田茂社長は、「水素ステーション開設は持続可能な社会の実現に向けた現実解の一つであり、サプライチェーンの充実という点において非常に重要なプロジェクトである。取り組みを重ねたい」と意欲を示しました。大型トラックもFC商用車も含まれ、水素利用の裾野拡大に向け、今後の動きが注目されます。
東京都交通局有明自動車営業所
松本明子副知事
テープカット
充填式
液化水素を貯蔵するタンク
手前には三菱重工業製ポンプが稼働