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掲載日:22.08.03

物流DX入門:第12回
DXのハードルを格段に下げる「地図DX」という取り組み~AIやIoTではなく「地図」を切り口にするという発想

 企業がDXに取り組もうとする場合、どうしても「AIやIoTといった最先端のツールを導入しなくては」ということになりがちと思われます。
しかし、AI、IoTといっても具体的なイメージを掴みにくく、「そもそも何ができるのか」等が分かりづらい状況にあると思われ、そのことがDXへの取り組みのハードルを上げているのではないでしょうか。
 逆に言えば、我々にとって身近で、具体的にイメージしやすいツールをDXへの取り組みに活用できれば、DXへの取り組みのハードルは大きく下がることが期待されます。そのような身近で、具体的にイメージしやすく、そしてDXにおいて活用できるツールとしては「地図」が挙げられるのではないかと考えます。
 私たちは子供の時から地図の読み方を習っており、地図を利用したことが無い人はまずいないと思われます。近年は、地図に含まれる情報がデジタル化された地図が普通に使われています。地図の縮尺を拡大したり縮小したり、最短経路の探索等を簡単にできる地図は、普段使いする日常的なツールになっていると言ってよいでしょう。このようにデジタル化された地図を使いこなしていることは、個人レベルでは既に、地図というツールを通してある種のDXを体現していると言っても良いのではないでしょうか。
 もちろん、企業の取り組みとしてDXを実現するには、単にデジタル地図で場所を探すことや、2地点間の距離を測るだけでは不十分です。しかし、より踏み込んだデジタル地図の活用体制を構築できれば、DXを実現したと言えるレベルに到達できるかもしれません。
 そのための一つの方法が、デジタル地図を活用した「地図DX」の実現を支援してくれるツールの導入です。ツールの一例として、NTTデータ社のBizXaaSMaP (ビズエクサース マップ)を挙げます。
 BizXaaSMaPの機能の一つは、過去の渋滞実績に関する道路走行データを活用した走行時間予測機能です。走行時間予測機能であればカーナビにもありますし、市販されているデジタル地図にもその機能はあります。BizXaaSMaPが優れている点は、過去の渋滞実績に関する道路走行データの分析にAIを用いているということです。このAIには過去の渋滞実績に関する道路走行データを学習させ、渋滞予測用の学習済みモデルを生成しています。ある年のお盆の渋滞予測においては、公的機関から「〇〇日頃が渋滞のピークになる」という予報が出されたことを受けて「その情報を知った人たちが帰省先から戻る日を早める」と予想して的中させ、その成果はテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」で取り上げられるなどしました。
 物流事業者の場合、発着地間の走行時間予測は非常に重要であり、仮にこのBizXaaSMaPを導入して、渋滞を回避して日々の輸送業務を効率化できたとするなら、デジタル地図やAIを活用したDXを実現できたことになると思われます。
デジタル地図とAIをそれぞれ別々に導入して、自社で渋滞予測を実現できるようにすることは容易ではありません。デジタル地図とAIが既に組み合わされているBizXaaSMaPのようなシステムを「地図DX」の基盤システムとして導入することで、「地図DX」実現までのプロセスを大幅に短縮できる可能性があります。
 また、物流業における基本的な業務である輸送において、地図は欠かせないツールです。それゆえに、物流業は「地図DX」との相性が非常に良いことが考えられます。前述のBizXaaSMaPを物流事業者が導入した事例はまだありませんが、ある自治体では、ごみ収集にBizXaaSMaPを活用することで、業務の効率化とサービス水準の向上を実現しており、この事例は物流業にとっても参考になるのではないでしょうか。


図1 BizXaaSMaPのごみ収集における活用イメージ
(NTTデータ ホームページより)


 この事例において構築されたシステムは、自治体のゴミ収集業務において、ごみ集積所や使用世帯を住宅地図上で一元管理するというものです。ごみ収集車両の位置情報も管理できるため、ごみ収集車がどこをどのように走行しているのか、ごみの回収の完了についても合わせて地図上で確認できます。
 このシステムが導入される前は、住民は自分が使用しているゴミ集積所にごみ収集車がいつ到着するのかを自治体に問い合わせなければなりませんでした。自治体は住民からの問合せ対応に多くの時間を割かれていました。システム導入後、住民は自分でスマホを見ればごみの回収時刻が分かるようになり、自治体は住民からの問合せ対応時間を大幅に削減できたのです。この事例は、物流事業者においても、多数の地点を回るルート集荷・配送業務などに応用が可能であることを示していると考えます。