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掲載日：21.06.02

国土交通省／過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル検討会を再開～社会実装化に向けてガイドライン策定へ

　国土交通省は3月25日、第5回過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル検討会を開催しました。この検討会は、2019年に中間とりまとめを行っており、その後ドローン物流の実証実験が進み、取り巻く環境も変わってきたことから、物流におけるビジネスモデルを改めて検討するため、再開されました。20年度に実施した12地域での実証実験および既に実用化している伊那市からのプレゼンテーションを受け、国土交通省と内閣官房を中心に検討を行い、現時点において飛行が認められているレベル3飛行（無人地帯での目視外飛行）を対象に、過疎地域等におけるドローン物流の本格的な実用化・商用化に向けて、ドローンを活用した荷物配送に関するガイドラインを今夏にまとめる予定です。22年度を目途としたドローンの有人地帯での補助者なしでの目視外飛行（レベル4）の実用化を目指していきます。

〇検証で飛行の安全性は確保、維持費等のコスト負担が課題
　全国12地域のドローン物流事業が20年度予算により採択され、計画策定経費（上限500万円）および機材・設備経費（補助率2分の1）の補助を受けて、実証実験が行われました。
このうち、北海道当別町では、農場と出荷場（道の駅）の間でドローンを活用して農作物を運搬することで農家の負担を軽減することを目指しています。実証実験によってドローンの安全な飛行が確保できることを検証できましたが、実用化する上では機体費や維持費など高額なコストが発生するため、事業者の参入障壁が高いことが課題になりました。このため、地方銀行が機材を購入して運用事業者にリースする案や、運用事業者が機材を購入して農作物運搬作業を行い農家から利用料を徴収する案などが提案されました。
　秩父市大滝地区では、山間地に囲まれて点在する谷あい集落において、平常時の買い物サービスと緊急時の物資輸送を想定して実験を行いました。技術面ではドローンの航続距離が限定的なこと、ドローンポートの購入による導入設置はリスクが高いこと、運用面ではドローンのオペレーションにかかる人的コストが課題に挙げられました。
　島根県美郷町では、江の川の上空に多数ある高圧送電線を越えて飛行するために高度150m以上を飛行する必要があったことや、フライト中に電波障害があり一時的に通信が断絶する場面があるなどの課題がありました。1日数回のフライトや1者だけの荷物運搬では採算が合わないことから、社会実装にあたっては複数事業体が運用することで設備投資費やランニングコストを分散し、取り扱う荷物も増やすことが必要であるとしています。また、ドローン物流の拠点駅である公民館まで運搬した後に、公民館に取りに来る仕組みや他の者が受け取りにくる「共助」の仕組みなど、家まで配達するラストワンマイルの配送の仕組みが必要なことがわかりました。
　島根県吉賀町では、土砂災害などで道路が寸断された場合に孤立する集落が発生するリスクがあり生活物資や医薬品の緊急配送、オンライン診療と連携したドローンでの薬の配送、軽量物の小口・多頻度配送を社会実装モデルとしました。
　大分県竹田市宮砥地区では、診療所がないことから、医薬品をドローンで配送する実験を行い、悪天候時における飛行の対応（全天候型ドローンの活用、スケジュールの柔軟対応）や、ドローンから薬を受け渡しする際の本人確認方法の検討などに課題があるとしています。
　神奈川県小田原市では、急斜面にあるみかん畑の収穫現場から集荷所への輸送にドローンの活用を実施しました。事業化に向けては、複数の農園での共同購入・共同利用を行い、初期導入時の不足コストは補助金の活用を想定し、農作業にドローンを使用しない期間は他の事業者へレンタルすることによる収益化が必要としています。今後は、バッテリーの性能向上による稼働時間や飛行距離の改善、より広範囲な飛行の自動化が課題に挙げられました。
　長野県伊那市では、昨年8月から買い物サービス「ゆうあいマーケット」の本格運用を開始しました。ケーブルテレビのリモコンを使って商品を注文することで、ドローンが近隣の公民館まで商品を配送します。
　この検討会は、今後、ガイドラインの改定に向けて、①基本コンセプトの構築、②検討・実施体制の整備、③サービス内容、採算性確保、④安全性の確保、⑤PDCAサイクルによる事業継続性の確保等について、検討を進めていく考えです。