日本通運(本社=東京)は、GDP(医薬品の適正流通基準)の要求事項をハード、ソフト両面で実現し、より安心・安全な医薬品供給が可能な医薬品サプライチェーンネットワークを構築中であり、国内の核となる4拠点が順次稼働するほか、厳しい品質基準をクリアするため、日通独自で開発した医薬品専用車両を導入します。
また、医薬品サプライチェーンのグローバル化を踏まえ、世界の主要マーケットにGDPに準拠した拠点を展開し、グローバルレベルでのサプライネットワークを拡充していきます。
さらには、IoTやブロックチェーンといったデジタル技術を取り入れ、物流上の情報を一気通貫でとらえることにより、トレーサビリティや業務効率化をはじめとした、データドリブンでの業界全体のサプライチェーン最適化に貢献することを目指します。
【背景】
「日通グループ経営計画2023~非連続な成長“Dynamic Growth”」の「コア事業の成長戦略」における重点産業の1つとして掲げる医薬品産業は、世界の市場が2014~18年の5年間で年平均6.3%の成長率を遂げ、2018年の世界市場規模は約100兆円に上っており、19~23年も同3~6%で推移するとみられています。日本市場についても、市場規模は約10兆円で世界3位となっています。
医薬品は、輸送や保管の際に、厳密な温度管理やセキュリティ管理が求められる一方、医薬品市場のグローバル化に伴い、医薬品の偽造や盗難も大きな問題になっています。欧州では、医薬品の適正流通基準が法制化されており、北米でも2023年には法制化される動きがあります。日本でも厚生労働省から「日本版GDP」のガイドラインが発出されており、GDP導入に向けて、日本の製薬会社も対応を迫られています。
日通は、高い専門性と厳格な品質管理が求められる医薬品物流を担うため、2020年7月に医薬品事業部および医薬品物流品質保証室を新設し、オペレーション体制、人財育成および品質保証体制等を全社統一の基準で推進しています。
【安心・安全な医薬品供給が可能なグローバル医薬品サプライチェーンネットワーク】
~来春国内サービス開始、そしてグローバルへ~
①国内でのサプライネットワーク構築
日通は、従来からの原材料・製品の輸出入拠点である、いわゆる“メディカルハブ”の成田国際空港、関西国際空港に加え、東日本、西日本、九州、富山に医薬品に特化した拠点を建設中です。
GDPに基づく品質管理に加え、医薬品供給のBCP(事業継続計画)に対応するとともに、従来、顧客ごとに実施されてきた倉庫での保管および輸送の共同化や、車両のラウンドユースによるトラックドライバー不足への対応、業務効率化が可能なプラットフォームを構築しており、2021年2月にサービスを開始します。
・新設倉庫の特長
PIC/S GDPを規範として日本版GDPガイドラインをクリアした
医薬品専用倉庫を順次竣工します。
1.入荷エリア、保管エリア、出荷エリアを明確に区分し、
安全・確実なオペレーションを確保(東日本拠点、西日本拠点)
2.トラックドック、前室、シートシャッター、エアシャワー、
エアカーテンを配置し、入出荷作業の際の防虫管理とセキュリティを確保
3.定温、保冷の温度管理に加え、輸出入用の保税エリア、
特殊医薬品エリアなどサプライチェーンのあらゆるニーズに対応
4.保管エリアにおいては、温度を24時間総合監視
5.災害等に備えた、免震構造(一部除く)および非常用発電設備の設置
6.自動化設備導入による庫内オペレーションの高度化
・医薬品専用車両の特長
GDPが要求する厳しい品質基準に応えるため、自社による医薬品専用車両を導入します。
車両に搭載された設備は、日通が独自に開発した世界最高基準の仕様です。
1.各種セキュリティシステムによる安全・確実なオペレーションの担保
2.複数温度帯に対応した空調設備を完備し、
夏季および冬季の厳しい環境下でのバリデーション実施済車両
3. 温度管理に加え、輸送中の動態管理を含めた温度監視システム
②グローバルレベルへの拡充
海外では、日通のグローバルネットワークを駆使し、インフラとフォワーディング機能を連携させ、医薬品物流要求事項に適合したグローバルレベルで安全性を保証する物流ネットワークの構築を進めています。
具体的には、海外の医薬品主要拠点に、GDPに準拠したCFSの建設を推進しており、新薬メーカーが集積する欧州ではロンドン、ミラノで、ジェネリックを中心として高い市場成長を示すインドではGDP認証済みCFSを開設済みであり、世界最大のマーケットである米国では、シカゴでGDP認証を取得しました。今後も、欧米における更なる拠点の拡充に加え、医療サービスが充実しつつあるアジア各国においてもGDP認証取得が計画されています。
・CFS
海外フォワーディング拠点をネットワークで配置
1.GDP認証を取得した設備と発送から到着までのエンドtoエンドで
一貫した品質のオペレーションを構築
2.現地に品質保証チームを配置し、本社の医薬品物流品質保証室と連携して、
グローバルでの品質管理システムを構築
・M&Aによるロジスティクスネットワークの展開
米国において医薬品産業向け物流事業で確固たる地位を有する事業者(MD Logistics, LLCおよびMD Express, LLC)を子会社化し、同国内を日通の医薬品グローバルサプライネットワークでカバーしました。引き続き、欧州およびアジア域内の物流ネットワーク展開が期待されます。
③データドリブンでサプライチェーンを高度化
日通は、医薬品をはじめとした各産業軸に対し、サプライチェーン全体の最適化を図るソリューションを提供するべく、2020年4月にデジタルプラットフォーム戦略室を新設しました。
医薬品産業に向けては、温度管理をはじめとした物流情報をEnd-to-Endにつなぐ、IoTデバイスとブロックチェーンを活用したデジタルプラットフォームを構築中であり、物流情報を活用した商流におけるサービスの展開が計画されています。このデジタルプラットフォームは、オープン化により関係者が共同利用できるよう検討が進められています。
・ロジスティクスプラットフォーム
物の動きと物流品質のトレーサビリティを実現するため、
インテル社との連携によりIoTプラットフォームを構築
・センシングデバイス
物流情報を管理できるIoTデバイスを開発
・商流プラットフォーム
物流上のトレーサビリティデータを活用したサービス提供
1.トレーサビリティ提供サービスを2021年4月に開始予定
2.その他のサービスとして、在庫最適化、決済機能、アセットの共有化機能を実装予定
3.将来オープンプラットフォーム(業界横断コンソーシアム)を企図した取り組み
◇本件に関するお問い合わせ先
日本通運株式会社 広報部
担 当:神・佐藤
TEL:03-6251-1454
e-mail:
ko_ho@nittsu.co.jp