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物流現場訪問:
掲載日:20.10.07

カスミ/小売物流が抱える課題にオリジナルの物流戦略を推進し効率化を実現~コロナ禍でも大きな混乱なく対応

 カスミは、茨城県を中心に、北関東で189店舗を展開する老舗スーパーマーケットです。オリジナルの物流戦略を推進していることでも知られています。小売物流は多品種少量化による非効率なオーダーに加え、生鮮品やチルド日用品では特に物流波動が大きいことから物流面での課題を抱えており、ドライバー不足がさらに追い打ちをかけます。同社は、TC型(通過型)の小売物流の強みを活かした「TC型サプライチェーンマネジメント」を構築しています。その現場を訪問し、コロナ禍への対応についても取材してきました。

 カスミは、2003年にイオングループと提携し、つくばエクスプレスの開通に伴い、積極的な出店を進めるなどの戦略を推進してきました。2007年には年間来店数が1億人を突破しました。2015年にはマルエツ、マックスバリュ関東と経営統合を行い、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)を設立しました。現在3社の物流を統合している段階です。物流戦略を推進し効率化を実現している現場をレポートします。

〇TC型サプライチェーンマネジメントを構築
 カスミの物流戦略を担当しているのは、商品開発部の齋藤雅之マネジャーです。齋藤氏はカスミの協力会社・三共貨物自動車の社員としてカスミの物流を支え、2004年に稼働したカスミ岩瀬センターのセンター長として物流現場で手腕を奮ってきました。その後、手腕を高く評価され、カスミの物流担当マネジャーとして迎えられました。
 カスミに入社した齋藤氏の最初の大きなミッションは、新たな物流センターの開発でした。小売店の物流は、多品種少量化のトレンドが進んだ結果、非効率なオーダーとドライバー不足の環境変化が追い打ちをかけていました。
 カスミは、岩瀬流通センターを開設し、中央流通センターから数十店舗分の荷物を移管しました。その結果、地場の小さなサプライヤに混乱が生じました。「発注量が変わらないのに納品場所が増えたため、物流コストが2倍に跳ね上がりました。小さなサプライヤには死活問題になるほどのインパクトだった」と齋藤氏は振り返ります。そこで、複数のサプライヤから、センターを運営する三共貨物自動車に対し、納品代行が打診されました。納品代行を請け負うには、荷主であるカスミの理解と協力が欠かせないことから、当時のカスミの物流セクションの責任者だった藤田前社長に相談したところ、同様の課題を持つサプライヤを紹介されました。その事例を元に、約1年後に荷主の物流センターを舞台とした共同配送スキームの構築を開始しました。ベースとなるのが、TC型の小売物流の強みを生かした物流戦略「TC型サプライチェーンマネジメント」でした。

〇納品工程を同一トラックで使い分け
 小売物流の課題の1つが販売量=物量波動を平準化できない点にありました。ドライ加工食品は在庫型(DC)により波動問題を一部吸収できますが、生鮮品やチルド日配品などはTC型であり、サプライヤが受け持つ物流のリスクは大きくなります。またトラックがセンターに定時入構できても、入荷トラックが渋滞の列をなすなど、着荷主都合による問題も発生していました。
 それに追い打ちをかけたのがドライバー不足です。「荷主が物流会社を選ぶ時代から、選ばれる時代になった。選ばれるには、前後工程の連携でドライバーの作業負担を削減しなければならない。改善できない荷主からは物流会社が離れ、非効率で高コストの物流を受け入れるしかなくなる」と齋藤氏は語ります。
 センター管理のニーズのみ追い求めると、サプライヤの納品を請け負う物流会社がなくなり、指定した納品時間を守れなくなります。その結果、入荷時間が読めず、入荷管理から派生するカテゴリー管理も崩壊してしまう負の連鎖が発生します。
 そこで、カスミは、2016年に新たな物流戦略で大きく打って出ました。千葉県佐倉市にTC型SCM対応機能を導入した「カスミ佐倉流通センター」を新設しました。敷地面積は3万3646㎡、2階建てで建屋の延床面積は1万3237㎡で、1階を流通センター、2階はプロセスセンター(精肉加工)と機能が分かれ、センター長には齋藤氏と長年仕事を共にしてきたSBSロジコムの大槻直紀氏が起用されました。
 新センター設置の狙いは3点です。複数カテゴリー商品の同時入荷を可能としたTC型SCM対応レイアウトの導入、入荷車両の積載情報により入荷管理がスムーズにできる車両マスター型WMSの構築、構内スペースと搬送機器を社外へレンタルすることによる調達物流ネットワークの拡大です。これらにより、ドライバー不足のリスクヘッジと消費者へ安全に商品を届ける「TC型サプライチェーンマネジメント」が始動していきました。
 運用の最大のポイントは、前後の工程を連携させることと、サプライヤ・センター間の納品代行の工程とセンターから店舗への納品工程を、同じトラックで使い分ける流れを採用したことです。入荷と出荷が同じ日に連動するTC型センターの入出荷特性を利用しました。12時間で商品調達を行い、ドライバーが交替した後に残りの12時間で店舗へ配送し、1車両での2運行を可能にしました。運送会社は2運行体制により車両稼働率が向上、ダブルインカムの安定した経営が費用対効果(ROI)を高め、昼夜勤務のドライバーをそれぞれ募集することで、地域の就業希望者のライフスタイルにも合致しました。
 調達ネットワークを利用することで原価が低減、昼間の空いたスペースや搬送機器をサプライヤや運送会社に時間貸しし、賃料収入と搬送機器レンタル料の新たな外販収入も生まれました。
 カスミの取引先約400社は、ネットワークを利用してカスミを含めた北関東の多くの小売へ商品を配送しています。24時間稼働するトラックが数十台規模あるため、緊急の増便にも臨機応変に対応できるようになりました。
 「カスミは対外的に競合他社と共同配送はできないが、中間に運送会社が仲介することで実質的な共同配送が実現する。」と齋藤氏は言い切ります。積載率とドライバーの稼働率も向上し、Win‐Win-Winの物流スタイルが完成しました。

〇コロナ禍の混乱時の対応~物流の視点で発注をコントロール
 コロナ禍の中、カスミは商流と物流のコントロールを行いました。前後工程の物流リソース確保を目的に、早い段階から商品発注の権限を店舗側に与えず、商品開発本部と物流センター側でコントロールしました。
 2月から倉庫スペースを全面的に使い、パスタや麺類など需要拡大食材の在庫を満庫にしました。店からの発注が増えると非効率な物流が発生すると判断し、出荷制限に踏み切りました。システム上の発注マスター停止など、商品開発本部と物流センターでコントロールを行うと同時に、特売などのプロモーションも休止しました。
 店舗への納品リードタイムの延長、物流センターの荷受時間帯の延長なども実施したことで、センターがパンクする事態は避けられたといいます。コロナ禍での物量実績は平均して前年比110%、最大でも170%にとどまり、大きな混乱は起きませんでした。
 ラストマイルにも対応したため、ネットスーパーも伸長しました。緊急事態宣言下のネットスーパー新規会員数は週ベースで前年比約500%を記録。売り上げは4月が同200%に跳ね上がり、5月に170%となりました。買い物難民という課題、三密を回避するためのライフスタイルがネットスーパーの需要を押し上げました。
 「今後、カスミが力を入れるべき点は、ラストワンマイル領域も含めた次世代のスーパーマーケットモデルの開発」と齋藤氏は展望します。
 しかし、ネットスーパーには課題が多いのも事実です。注文を受けると店舗のバックヤードから商品をピックアップし、軽貨物やスクーターで届けるスタイルが中心で「通常のセンター物流とは似て非なるもの。既存の物流コストにさらに追加のコストを上乗せし、非効率な物流を前提に人海戦術で対応している」(齋藤氏)のが現状です。
 「今回のコロナ禍で店舗も含めたSCM連携により、大きな作業遅延などの物流インシデントは回避できたが、同時に人力対応から抜け出せていない事実も露呈した」と問題を指摘します。このためBCP対策も視野に入れ、アフターコロナでの事業継続性を担保するために、「ロボティクス分野の投資を検討していきたい」と語っています。


佐倉流通センター



齋藤雅之マネジャー



入荷受付時は効率的なバースアテンドにより車両の停滞を削減



センター内の様子