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掲載日:17.08.08

齋藤充・日本通運社長、今後の抱負を語る~「ワンストップ営業、アカウント営業をさらに推進」

 日本通運の代表取締役社長に齋藤充氏が5月1日付で就任しました。総務・労働畑出身の社長が多い中で、財務畑出身の社長としては二人目、57年ぶりとなります。さらに、ナイジェリア、シカゴ、ニューヨークと10余年の海外勤務を経験しています。また、東日本大震災の現地最高責任者として危機管理の第一線に立ち、その後本社で管理本部担当の副社長を務めるなど、渡邉健二会長が後継者の条件として挙げた「全体を俯瞰して見られる人」の条件に正にあてはまります。7月から8月にかけて国内・海外各ブロックを廻るのを前に、日通グループの舵取りなどについてお聞きしました。


 ──入社の動機、入社時に抱いていた企業イメージは。
 ☆物流はなくならないと思いました。金融決済やITなどなかった時代ですが、モノを運ぶ仕事は世の中に欠くべからざるインフラだと思っていたし、その中にあって当社は、作業を中心に一生懸命取り組んでいる真面目な会社というイメージがありました。それは、時代の波や外からの目線にさらされるようになった今日でも変わっていません。

 ──財務のご経験が長かったが、経営にどう活かしていくのか。
 ☆最近は、ステークホルダーが財務的な指標を厳しく評価する時代になっています。いわゆるROAやROE、ROIC(投下資本利益率)など、いろいろな角度で資本効率、資産効率といった効率性が求められています。当社はバランスシートのマネジメントという点では、これまであまり財務的なテクニックを用いず、ナチュラルに取り組んできました。しかしここにきて、特に海外の投資家は非常にシビアな目で評価しており、財務的な側面もおさえていくことが重要になってきています。私が社長に就いたということは、財務面にもう少し経営の意思を反映させるように、といった期待もあるかもしれません。財務的な目線も意識しながらグループ全体を動かしていきたい。

 ──90年代のシカゴでは労働争議で苦労されたとのことだが、海外のご経験で今、活かせることは。
 ☆シカゴに赴任当時、米国では組合活動を商売の様にしている労働組合が存在していました。いったん従業員の中に入られてしまうと対応が難しいので警戒していましたが、結果的に大変苦労しました。そこで強く感じたのはコミュニケーションの大切さです。当時は仕事が次から次へと入ってきた時代であり、日本から現地に赴いた社員はその対応で身を粉にして働いていました。しかし、現地の人からは不可能な量の仕事を押し付けられたようにみえてしまいます。荷物を待っているお客様がいて、それを届けることが大切であるということを、日々しっかりと伝える機会をつくれば良かったのですが、そうした時間さえも持てない状況でした。
 今、日本は働き方改革が問われています。根底には労働力不足があり、当時の状況とは異なりますが、オープンなコミュニケーションが大切だということは改めて感じています。日本流の以心伝心では、特に今の若い人には通じません。キチンと話したり書いたりして伝えることが大切だと感じています。

 ──東北ブロックの担当役員として東日本大震災を経験されたが、被災当時、その後の立て直しで苦労されたことは。
 ☆自らが被災者でありながら、指定公共機関としての責務をまっとうしようとする従業員と、それを支える会社、グループの底力に改めて感服しました。その後、我々自身を元の形に戻すのに際しては、苦労やトラブル、ストレスはありませんでした。回復のスピードを上げるために、本社をはじめ全国からサポートを受け、大変ありがたかった。一方、お客様や地元の復興は、まだ終わっていないところもあります。当社は鉄道や海運、航空などさまざまな業界団体の要職を務めています。会員の要望や申し入れを取りまとめ、公平に反映させていく必要があり、会社の枠を超えた役割を担っていると感じました。

 ──現中期経営計画は2年目に入りました。1年目の評価と今後の課題は。
 ☆初年度は、業務改革とオペレーション一本化の成果により、利益ベースでは良い数字を残すことができました。ここ数年、国内複合事業を中心に取り組んできた限界利益管理など、コストコントロールを行う力がある程度ついてきたと考えています。しかし、残念ながら減収増益でした。もちろん、為替の影響など外部の要素はありますが、収入を伸ばしていくことは最も大きな課題です。収入が伸びない中では、さまざまな費用低減施策の効果も限定されてしまいます。このため、国内では大きなアカウント顧客が集中する東名大を中心に営業拡大を図っていきます。国内の製造業でも、大半は海外と何らかのつながりがあるはずであり、陸海空のワンストップで営業することにより、まだまだ売り上げを伸ばすことは可能だと考えています。とりわけ最大のマザーマーケットである首都圏で収入を上げていく方策は、やはり構造改革の深度化、構造改革を踏まえた営業体制の構築、オペレーションの強化だと感じています。オペレーション機能を高めることが安全や品質面、コンプライアンスなどの競争力強化につながります。
 昨年、東京・江東区新木場に「Tokyo C─NEX」が稼働したので、陸海空のボーダーを超えて提案し、オペレーションする力を具備して我々の裁量でサービスを提供する能力を高めていきたい。売れるオペレーションを武器に提案能力を高めていくことが大事になります。
一方、東名大以外のブロックでは、例えば北海道の農産品、九州北部から中国地方にかけての自動車関連など、それぞれのマーケットに即した営業開発を進めていきます。海外は、東南アジアが主戦場になりますが、欧米にもまだまだ拡大の余地はあると考えています。

 ──中期経営計画は、真のグローバルロジスティクス企業を目指すとありますが、齋藤社長自身これをどう捉えていますか。
 ☆陸海空を総動員してワンストップ営業することは当たり前で、これを超えてもっとグループを挙げて取り組むことが大事です。ファイナンス、在庫引き取りなどの商事機能、IoT、コンサルタント能力、それに何といっても海外ネットワークをつなぐ力。これらを総動員することによって、圧倒的な差別化を図っていきます。グループのだれもがこうした強みを理解し、完結できる力を発揮していくことが真のグローバルロジスティクス企業だと捉えています。

 ──日通グループの目指すべき将来像は。
 ☆将来的には、いわゆるメガインテグレーターと競争していく存在を目指したい。そのためにも、グローバルな貨物のボリュームを増やす必要があり、ワンストップ営業、アカウント営業をさらに推進していきます。非日系顧客へのセールスも、当社にとってまだまだ取り組む余地があります。昨年、シンガポールに「グローバル・イノベーション・センター」を開設しており、非日系顧客への営業にも積極的に取り組んでいきます。

 ──フォワーダーとキャリアー両方の機能を持つ、いわゆる「インテグレーター」を目指すことも視野にありますか。
 ☆フォワーダーには、必要な時に必要なスペースをタイムリーに仕入れるという大きな強みがあります。一方、国内の有力企業と連携してなんらかのプラットフォームを構築し、もう少し自分の裁量で貨物を動かすことが出来るように検討することも必要かもしれません。

 ──運賃改定について。
 ☆運賃改定は、すべてのお客様に一律何%の値上げを要請することはまったく考えていません。お客様ごとの契約、作業条件、これまでの交渉経緯などを踏まえながら丁寧に対応していきます。それに、運賃の見直しではなく、業務量や業務範囲の拡大といった対応も考えられます。ただし、手待ち時間など契約書に記載されずに無償サービスとなっている部分に対しては、状況を丁寧に説明して、ご理解をいただきながら適正な運賃料金を収受するようにしていきたい。

 ──「外柔内剛」が信条とお聞きしましたが、その心は。
 ☆先ほど、オープンなコミュニケーションが大切だと申し上げましたが、労働問題に限ったことではなく、国内外問わず開かれたコミュニケーションがなければ始まらないと考えています。一つのコミュニケーションが入口となって、さらにいろいろなコミュニケーションが広がっていきます。一方、コアな部分はしっかりと持っておかなければならない。

 ──趣味について。
 ☆趣味は食べ歩き。高級なものでなく、いわゆるB級グルメなど。最近はなかなかできませんが、広島に行ったときは、一人だけでも、必ずお好み焼きを食べに行きます。

 ──就任の際に、ジムへは毎週行きたいと言われていましたが。
 ☆ジムへは目下、ウィークデーに行く余力はありませんが、土日のどちらかには必ず通っています。

 ──最後に、日本通運をどんな会社にしていきたいですか。
 ☆一言でいえば「従業員が幸せを感じられる会社」「社会に貢献できる会社」にしていきたいと考えています。従業員が幸せになれば良い仕事ができる、良い仕事ができれば企業価値が高まり、お客様も幸せになり、社会に貢献できる会社になると思います。そのための仕組みづくりをやり遂げたいです。